Amazon Bedrockで実践するプロンプト最適化とは 生成AIの回答精度を高める設計・改善手法を解説
生成AIを業務に取り入れる企業が増える一方で、「思ったような回答が返ってこない」という声も少なくありません。その要因の多くは、AIモデルそのものではなく、AIへ与える指示文=プロンプトの設計にあります。本記事では、回答精度を左右するプロンプト設計の考え方と代表的な手法を整理したうえで、Amazon Bedrockが提供するPrompt Management・Prompt Optimizationを用いた継続的な改善の進め方までを解説します。
なぜプロンプトの品質が生成AIの回答品質を左右するのか
ChatGPTなどの生成AIを利用していると、「同じAIなのに質問の仕方によって回答の質が大きく変わる」と感じることがあります。
生成AIに対して入力する指示文を「プロンプト」と呼びます。生成AIはプロンプトに記載された目的や条件、前提情報をもとに回答を生成するため、指示が曖昧であれば回答も曖昧になりやすくなります。
例えば、「AWSについて説明してください」とだけ入力した場合、生成AIには対象読者や文字数、説明してほしい範囲が分かりません。その結果、利用者が期待していた内容と異なる回答になる可能性があります。
一方、「AWSを知らない新入社員向けに、AWSの概要を300文字程度で、専門用語をできるだけ使わず説明してください」のように目的や条件を指定すれば、生成AIが求められている回答を判断しやすくなります。生成AIの性能を十分に引き出すには、利用するモデルだけでなく、プロンプトを適切に設計する「プロンプトエンジニアリング」が非常に重要です。
品質が向上するプロンプト設計の基本
良いプロンプトを作成する基本は、「何をしてほしいのか」を具体的に伝えることです。例えば、役割、目的、入力情報、制約条件、出力形式などを明確にします。具体的な手法を見ていきましょう。
プロンプト設計の代表的な手法
プロンプトエンジニアリングにはさまざまな方法があります。ここでは代表的な3つを紹介します。
例の提示~Few-Shotプロンプティング
数個(Few)の例(Shot)という名前の通り、生成AIに指示する際に「回答例」をいくつか一緒に提示する手法です。例えば、キリンの鳴き声を調べたい場合、「犬→ワン、猫→ニャー、キリン→?」と提示することで、意図した形式で精度の高い回答を安定して引き出せます。
段階的な出力~プロンプトチェーニング
プロンプトチェーニングは、複雑な処理を一度に実行させず、複数のプロンプトに分割して順番に処理する方法です。例えば「障害報告書を分析して対策案を作る」という処理であれば、
- 障害内容を要約する
- 原因候補を抽出する
- 原因ごとに対策を考える
といった形で段階的に処理します。
反復と改善~RCI
RCI(Recursive Criticism and Improvement)は、生成AIが作成した回答を生成AI自身に評価させ、問題点を修正させる方法です。例えば最初の回答を生成した後、「先ほどの回答に事実誤認や説明不足がないか確認してください」と指示するような手法です。
「回答例の提示」でAIはどれだけ変わる?
生成AIを業務で利用する場合、単に「詳しく回答してください」と指示するより、期待する回答例を提示した方が出力を揃えやすくなります。
例えば、社内FAQの回答を作成するとします。「社員からの問い合わせに回答してください」だけでは、長文になる場合もあれば、箇条書きになる場合もあります。一方、「回答は最初に結論、その後に理由、最後に操作手順を記載してください」と指示し、さらに実際の回答例を1~3件程度提示すれば、生成AIは求められている構成を把握しやすくなります。
Few-Shotは特に、文章のトーン、分類ルール、JSONなどの出力形式を統一したい場合に活用しやすい手法です。
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Before / Afterで見るプロンプト改善例
例えば、社内のIT問い合わせAIボットがあったとして、『Windows Updateができない原因を教えてください。』と質問したとします。これだけでは、利用者のIT知識、求める回答量、回答形式などが指定されていません。従って、以下のように改善するとうまくいきます。
『あなたは企業の情報システム部門の担当者です。
Windows Updateに失敗した社員向けに、考えられる原因と確認手順を説明してください。
対象者はITに詳しくありません。「考えられる原因」「確認方法」に分け、専門用語には補足説明を付けてください。』
こちらの例では、「誰として回答するか」「誰に説明するか」「何を回答するか」「どの形式で出力するか」が明確になっています。良いプロンプトは、生成AIが判断するために必要な条件が備わっていることが重要です。
Amazon Bedrockにおけるプロンプトの継続的な管理・改善手法
Amazon Bedrockでは、プロンプトを継続的に管理・改善するために「Prompt Management」が提供されています。Prompt Managementでは、プロンプトの作成・保存に加えて、変数の設定、モデルの選択、推論パラメータの変更、複数のプロンプトの比較、バージョン管理などが可能です。作成したプロンプトを再利用できるため、アプリケーションごとにプロンプトを直接コードへ書き込む方法よりも管理しやすくなります。
また「Prompt Optimization」を利用すると、作成したプロンプトをAmazon Bedrockが分析し、選択したモデルに適するように書き換えることができます。Simple Optimizationでは、主に短いプロンプトを対象として、元のプロンプトと最適化後のプロンプトを画面上で比較できます。AWSでは約1,000トークン以下のプロンプトに適しているとしています。
さらに2026年5月には「Advanced Prompt Optimization」が追加されました。Advanced Prompt Optimizationでは、プロンプトだけでなく、入力例、正解となる回答、評価指標などを与え、評価結果をフィードバックしながらプロンプトを改善できます。
最大5つのモデルを比較できるため、新しい生成AIモデルへ切り替える際の検証にも利用できます。
◆Amazon BedrockのPrompt Management・Prompt Optimizationを活用する
Bedrockには、プロンプトを資産として管理する「プロンプト管理」と、自動で改善する「プロンプト最適化」があります。製品紹介文のプロンプトを題材に、両機能を確認します。
プロンプトを作成して管理する
- 左ナビゲーションの[プロンプト管理]から右上の[プロンプトを作成]をクリックし、[名前]に「product-summary-prompt」、[説明]に用途を入力して[作成]をクリックします。

図1:プロンプト管理の画面。作成・テスト・利用の流れが示される

図2:プロンプトの作成ダイアログ
- プロンプトビルダーで[モデルを選択]からNova Pro(APAC Nova Pro)を適用し、「プロンプト」欄に次の文を入力します。
あなたは製品紹介文を作成するマーケターです。次の製品について、
特徴を3つの箇条書きで示したあと、100字程度の紹介文を日本語で
作成してください。製品:{{product}} - 下部の「テスト変数」で product に製品名を入力し、右側の[実行]をクリックすると、指示どおり箇条書きと紹介文が生成されます。確認後[ドラフトを保存]し、必要なら[バージョンを作成]で記録を残します。保存したプロンプトはフローやアプリから呼び出せます。

図3:変数に値を入れてテスト実行した結果
プロンプト最適化を利用する
- 自動改善には左ナビゲーションの[Advanced Prompt Optimization]を使います。Setup(プロンプトと正解データの登録)→Optimize(評価にもとづく書き換え)→Evaluate(改善前後の比較)という流れです。

図4:Advanced Prompt Optimizationの概要画面
- [Create prompt optimization]から、対象モデル(最大5つ)、プロンプトを記載したjsonlのS3 URI、出力先S3を指定して実行します。小規模でも15〜20分ほどかかります。

図5:最適化ジョブの作成画面。対象モデルとS3の場所を指定する
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まとめ
生成AIの回答品質は、利用する生成AIモデルだけで決まるものではありません。目的、条件、出力形式、回答例などを適切にプロンプトへ記載することで、期待する回答を得やすくなります。Few-Shot、プロンプトチェーニング、RCIなどの手法を利用すれば、回答形式の統一や複雑な処理、回答の自己改善にも応用できます。Amazon BedrockではPrompt ManagementやPrompt Optimizationを利用することで、プロンプトの作成、比較、バージョン管理、最適化までAWS上で実施できます。
企業で生成AIを継続的に利用するのであれば、「良いプロンプトを一度作って終わり」ではなく、回答結果を確認しながらプロンプトを継続的に評価・改善していくことが重要です。




