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エッジ活用支援コラム

これからやってくるエッジコンピューターと5Gの世界

5Gとは?

近年『5G通信』というワードがニュースやCMで流れているかと思います。5G通信は最新の通信規格のことで、英語の「5th Generation」の頭文字をとって5Gと呼ばれています。「第5世代移動通信システム」を意味します。5G通信は、現在主流となっている4G通信の規格よりも圧倒的に高速になるため、モバイル通信でできることはさらに広がり、さまざまな新サービスへの応用が可能になると期待されています。

5Gの具体的な定義とは?

2015年に、国際的な通信技術の取りまとめを行っている「国際電気通信連合」が策定したレポートによると、5G通信は下記の特徴を持っているものとされています。

  • 高速大容量…高速で大量のデータ送受信が可能
  • 高信頼・低遅延通信…通信におけるロスが少なく安定した通信が可能
  • 多数同時接続…同時に多数のデバイスとの通信が可能

これらの特徴と同時に、IoTや遠隔医療、ドローン制御、自動走行といった技術に利用されると予想されています。

5Gを取り巻く情勢は?

大手ITコンサル企業のGartnerでは、2022年における5Gの通信は2020年と比較して80%増加する、と予測しており(https://www.gartner.co.jp/ja/newsroom/press-releases/pr-20210805)、また2024年末までに、世界の大手通信サービスプロバイダーの6割が商用5Gサービスを開始し、世界の主要都市をカバーするとも予測しています。このように5G通信の技術は、世界的に急速な普及が見込まれているといっていいでしょう。

4Gから5G、どれくらい変わるのか?

4Gと比較して5Gはどのくらい違いがあるのか、5Gの特徴である

  • 高速大容量
  • 高信頼・低遅延通信
  • 多数同時接続

の観点からそれぞれ見ていきましょう。

高速大容量

5G通信の通信速度は、4G通信の10倍〜100倍高速であるといわれています。現在主流の4G通信が10Mbps~100Mbpsであるため、その100倍となると最高10Gbpsの高速大容量通信が実現することになります。これは、Webサイト閲覧における遅延がほとんどないだけでなく、より高画質な映画を高速で見ることもできるようになります。

高信頼・低遅延通信

5G通信における国際電気通信連合による伝送遅延の目標値は1ms(千分の1秒)となっており、4Gは10msだったため、5G通信であれは通信の遅延は4G通信の10分の1程度になります。現在、4G通信を利用してテレビ会議などを行うと、音声が途切れたり、映像の転送がうまくいかなかったり、といった現象に遭遇することがあると思います。5G通信においては、そのようなことは大幅に少なくなるといえるでしょう。また、遅延が1msとなると格段にリアルタイム性が増加し、自動運転システムや遠隔地のロボット操作といった技術も通信が可能になります。

多数同時接続

4G通信の場合は、基地局と通信を開始する前に利用する周波数や利用時間のやりとりが行われ、基地局が通信状態を管理します。これは、安定した通信を実現できる一方で、基地局側のキャパシティがオーバーすると通信が行えないことになります。

5G通信はこのようなやり取りが行われないという特徴(グラントフリー)があり、これによって通信の混雑を回避し、1つの基地局に多くのデバイスが同時アクセスできることになります。5Gの同時接続の目標値は100万デバイス/平方キロとなっており、4G通信の10倍となります。これによって様々なデバイス間で通信を行うIoTがますます盛んになることが予想されています。

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5GとIoT

先述のように、5G通信を活用することでリアルタイムに大量のデータを高品質に通信することが可能になるだけでなく、様々な機器の同時接続が可能になります。これによって飛躍的にIoT(Internet of Things)のビジネスへの応用が加速すると考えられています。

高品質な通信や大量のデータ接続によるビジネスの発展

例えば、高品質かつリアルタイムなデータの送受信は、遠隔地医療に貢献します。医療における聴診は精密かつリアルタイム性が求められますが、5G通信技術を利用すると遠隔地でも聴診ができるようになるかもしれません。医師がいない過疎地や離島などでも、5Gを使って都市部の専門医と患者を鮮明な映像・音声で結び、診断を行うことが可能になるでしょう。

また、様々な機器の同時接続技術は、ビッグデータやAIの活用に貢献します。各家庭にある家電製品の動作状況に関する情報をインターネット経由で収集・蓄積し、AIなどでデータを分析することで、サービスの改善や製品のメンテナンスなどに利用します。このように、5G通信技術はIoTの利活用に向けたある種のブレイクスルーとなりえる技術と考えるといいでしょう。

OMO

OMOとは「Online Merges with Offline」の略で、『リアルとオンラインの融合』を意味します。今までは通信技術がボトルネックとなり、リモート会議などが不便な面もありましたが、高速通信を利用することでよりオフィスと同じ環境でストレスなく仕事ができる環境を整えることができるようになり、いっそうリモート会議の技術が発展する可能性があります。リアルな映像やVRヘッドセットを使って、対面と同じようなコミュニケーションが実現するかもしれません。

5Gはエッジと製造業に何をもたらすのか?

製造業においては5G通信と、利用者に近いところでデータを処理する「エッジコンピューティング」を利活用し、製造現場の様々な課題を克服した『スマート工場』の導入が進められています。どのような課題を克服するのか、具体的に見ていきましょう

製造業の課題~人手不足

日本の少子高齢化や、コロナ禍による対面のOn-JT不足により、製造業の現場ではスキルを持った人員不足が加速しています。克服のためには対面のトレーニングや自動化が不可欠です。5G通信を使い、リアルタイム性が高い環境が導入できれば、オンラインでのサポートや追跡、訓練システムを提供できるようになります。また、リモートから工場の機器を操作することで働きやすさを実現し、若い労働力の取り込みも見込める可能性があります。

製造業の課題~大量のデバイスの導入

製造業の工場ではセンサーや産業用ロボット機器が密集しており、従来の無線LANでは電波干渉や遅延などの問題が発生していました。エッジコンピューティングを使えばネットワークの負荷が軽減されネットワークの遅延軽減が見込めますが、同時に、5Gを使えば通信性能を損なわずに遅延なく新たな機器を追加しやすくなるため、工場の機器交換などが容易になり、工場運営が円滑化する可能性があります。

製造現場で期待されるローカル5G

5G通信を自らの建物内や敷地内といった特定のエリア限定で活用するのが「ローカル5G」です。通信事業者が提供する基地局を介した5G通信(パブリック5G)とは異なり、ユースケースに応じてネットワークを自由に設計、構築できるという特徴があります。ローカル5Gは、パブリック5Gが天候や災害などによって障害が発生した場合でも影響を受けずに5G通信のメリットを享受することができます。

ローカル5Gを活用することで、下記のようなユースケースに対応が可能となります

有線ケーブルの排除

工場は様々な機器が稼働していることから、電波の干渉を避けるため有線ケーブルによるネットワークが張り巡らされており、レイアウト変更や機器交換が難しくなっています。ローカル5Gを敷設することで、様々な機器同士のネットワークの無線化が実現でき、運用の簡素化や、有線ケーブルでは実現が難しかったラインレイアウトの変更にも容易に対応できるようになります。

AIと組み合わせた品質の向上

現在製造業の現場では画像認識などのAI技術を活用して不良品などを検知する取り組みが行われています。ローカル5Gを用いることで、4K/8Kといった高画質のカメラにおいても画像の通信が遅滞なくできるようになるため、AIの精度も向上し、より品質向上に寄与することが期待されます。

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まとめ

5Gは新しい技術ですが急速な発展が予想されています。また、ユースケースも非常に多種多様で、様々な可能性が期待されます。特に製造業の現場においては導入の際にも費用対効果が得られるような場面が数多く存在します。ローカル5Gを含め、導入を検討してみるといいでしょう。