COLUMN誰でもわかる!お役立ちコラム

エッジ活用支援コラム

エッジコンピューティングとは

エッジコンピューティングとは?

AWS(Amazon Web Services)などを利用したクラウドコンピューティングが利活用されている一方で、ここ数年はエッジコンピューティング( edge computing )についても注目が集まっています。エッジコンピューティングとはどのような概念なのでしょうか。

コンピューティングとは?

エッジコンピューティングの前に、そもそも『コンピューティング』とは何なのかを説明します。『コンピューティング』という用語は、プログラムやソフトウェアを用いて、コンピュータで計算やデータを処理を行うことを指します。具体的には、コンピュータ上のメモリ、ネットワーク、ストレージ、およびプログラムなど、データを処理・計算し、アウトプットするための一連の仕組みのことを指しています。

エッジコンピューティングとは?

『エッジ』とは「先端」や「縁」を意味します。ITのシステム構成で考えると、『エッジ』はコンピューターネットワークの端の部分である「デバイス」や「システムの近くにあるサーバー」などを示します。これに『コンピューティング』の意味が加わる『エッジコンピューティング』とは、近くに分散配置されたサーバーでデータの処理や計算を行なうことを指します。

スタイルズのRancher/ Kubernetes /K3sによるエッジ運用基盤の構築サービスはこちら→

エッジコンピューティングとクラウドコンピューティングの違い

エッジコンピューティングとクラウドコンピューティングとは対極にある考え方です。クラウドコンピューティングは、コンピューティングを実施するリソースがクラウド上にあります。具体的には、ネットワークで接続されているデータセンター等に集約されたサーバーなどでデータを処理する形式です。

一方でエッジコンピューティングはクラウドから見ると、クラウドへの入り口部分、つまりクラウドの終端部分(エッジ)でデータを処理します。つまり、エッジコンピューティングとクラウドコンピューティングは、データを処理する場所に違いがあり、エッジコンピューティングはよりデバイスに近い場所でデータの処理がなされる、ということになります。

エッジコンピューティングに求められるもの

クラウドコンピューティングは非常に便利ですが、一方で「レイテンシ」「コストの問題」「データセキュリティの考え方」という3つのデメリットが存在します。エッジコンピューティングはこれらのデメリットを補完するものとして期待されています。それぞれの項目について具体的に見ていきましょう。

クラウドコンピューティングと比べた低レイテンシ

レイテンシ(latency)とは、ネットワークを経てデータ処理を開始してから終了するまでの遅延時間を指します。クラウドコンピューティングと比較して、データをその場で処理するエッジコンピューティングは、圧倒的な低レイテンシを実現することが可能です。具体的に、モバイルアプリケーションを使った場合の、処理ステップを見てみましょう。

クラウドコンピューティングの処理ステップ

  1.  現場のデバイスでデータを取得
  2.  遠方のデータセンターにデータを転送
  3.  遠方のデータセンターでデータを処理

エッジコンピューティングの処理ステップ

  1. 現場のデバイスでデータを取得
  2.  デバイスの近くに設置したコンピュータでデータを処理

このように、ステップが1つ少ないだけでなく、データ送信にかかわる遅延もエッジコンピューティングのほうが少なくなるため、クラウドコンピューティングよりも圧倒的にレイテンシが少なくなります。

通信コスト

クラウドコンピューティングで全ての情報を収集し、クラウドへ転送するというやり方では、無駄なデータの収集や送信が実施され、通信コストがかさんでしまいます。一方で、エッジコンピューティングで必要なデータを処理したりフィルターして、必要なデータだけをクラウド側へ送信することができれば、クラウド側のリソース節約や通信コストの削減が可能です。

具体的には、1MBのデータをそのままクラウド側へ送信する場合と、エッジで1KBに加工して送信する場合だと単純計算で1000倍コスト効率がいいことになります。

データ漏洩等のリスク低減

先ほど確認したように、エッジコンピューティングと比較してクラウドコンピューティングのほうがデータ処理のステップ数が多くなります。一般論として、ステップが多くなればなるほど攻撃のリスクにさらされやすくなります。したがって、エッジコンピューティングのほうがデータ漏洩や盗聴といったリスクが低減されます。

エッジコンピューティングの仕組み

エッジコンピューティングの仕組みは大別して下記の3層にて構成されます。

  • エッジデバイス…モバイルアプリケーションや端末などのデバイス、カメラや、センサーなどのIoT機器
  • エッジサーバー…エッジデバイスのデータを収集し、処理するサーバー。エッジサーバーにて、デバイスにレスポンスを返すだけか、クラウドにもデータを送信するかを判断する
  • クラウド…エッジデバイスやエッジサーバーのデータを取りまとめて、分析、加工し、エッジサーバーに返答する

場合によってはエッジにはサーバーがなく、カメラなどのデバイス自体がデータを処理する構成も存在します。
また、エッジデバイス並びにエッジサーバーは下記の機能を有しているケースがあります。

選択的なインターネット接続機能

例えばスマートフォンのように、機内モードにしてネットワークとの接続を遮断してもある程度機能は使用可能です。このように、エッジデバイスやエッジサーバはインターネットへの接続なしに独立してデータを処理することが可能になっており、セキュリティとレイテンシ低減に貢献しています。

独立した給電機能

エッジデバイスやエッジサーバーは独自の給電機能やバッテリーを備えているケースがほとんどです。給電線の確保が必要というデメリットもありますが、バッテリーは電力障害が起きている場合においても一定の時間稼働が確保できるというメリットが存在します。

エッジコンピューティングの課題

クラウドコンピューティングの様々なデメリットを克服することが期待されるエッジコンピューティングですが、実際に活用していくうえでは、いくつかの課題が存在します。

効率的なデバイス運用

エッジコンピューティングでは多様なデバイスが大量に設置されるアーキテクチャが採用されます。運用管理の視点から見ると、多種多様のOSを持つデバイスを一元管理することは非常に手間であるということは想像に難くありません。具体的な業務としては、デバイスへのファームウェア適用や、故障の検知と交換といった運用があげられます。このような運用業務をいかに効率的に実施できるかが重要な課題となります。

セキュリティ面の確保

エッジサーバーやデバイスは通常のサーバーと同様にセキュリティ対策が必要です。近年では、監視カメラ等のエッジデバイスに仮想通貨マイニングを行うマルウェアがインストールされたり、他のコンピュータを攻撃する踏み台にされたりしてしまうなどのセキュリティインシデントが発生しています。このようなマルウェア感染を事前に防止する仕組みや、感染しても迅速に検知する仕組みを整えておく必要があります。

ベンダーロックインの回避

多様なデバイス運用を効率化するために、デバイスを1つのハードウェアベンダーから調達することも考えられますが、この場合はベンダーロックインに注意すべきです。ベンダー固有の技術に強く依存した仕組みを採用した場合、他のシステムとのスムーズな連携が難しくなってしまったり、ベンダーの値上げ時に影響が大きく出てしまったり、といった弊害が考えられます。

ビジネスを行う以上、費用対効果は考慮すべき1つの要素であるため、長期的に見て費用対効果に悪影響が出るような機器構成や特定のベンダーへ頼り切ったシステム構成は避けるべきです。

スタイルズのRancher/ Kubernetes /K3sによるエッジ運用基盤の構築サービスはこちら→

まとめ

エッジコンピューティングはクラウドコンピューティングのデメリットを補完する様々な機能が存在します。一方で、考慮すべき課題をきちんとクリアにしないと、運用の複雑化やセキュリティインシデント、コストの増大を招いてしまい、エッジコンピューティングを用いたビジネスの失敗を招いてしまいます。導入に向けた検討には、エッジコンピューティングに詳しいベンダーに相談してみてもいいでしょう。