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AWS活用支援コラム

AWS Batchの利用方法とジョブの自動化手順

AWS Batchとは?

AWS Batchは、大量のデータを処理するためのジョブを効率的に実行するために提供されているAmazon Web ServicesAWS)のサービスです。従来、バッチ処理を実現するためには、自前で大量のサーバーを用意し、利用するサーバーのリソースの管理やスケジューリングを手動で行う必要がありました。しかし、AWS Batchを利用すれば、これらのタスクをAWSが自動化して管理してくれます。AWS Batchは、データ分析、画像処理、大規模なシミュレーションなど、計算量の多い処理を行う場合に最適です。AWS Batchは、ジョブの実行に必要なコンピューティングリソースを自動的に構築・展開し、コスト効率の良い実行環境を提供します。また、EC2のオンデマンドインスタンスやスポットインスタンスを組み合わせて使用することで、処理コストを最小限に抑えることができます。

バッチ処理とは

バッチ処理とは、一定量のデータやタスクをまとめて処理する方法のことを指します。例えば、日々蓄積される売上データを夜間にまとめて集計したり、大量の画像ファイルにフィルター処理を適用したりする場合など、リアルタイム性が求められない処理に適しています。バッチ処理で大事なことは、「効率性」と「スケーラビリティ」にあります。大量のサーバーなどのリソースで、大量のデータを処理する必要があるためです。また、コストを最適化するために、データ量に応じて処理するサーバーの台数を柔軟に変更できるようにしておく必要があります。したがって「効率性」と「スケーラビリティ」が十分なサービスでバッチ処理を行うことが最適です。リアルタイムでのデータ処理では大量のリソースが必要になる場面でも、バッチ処理なら適切なタイミングでまとめて処理することで、リソース使用を最適化できます。また、処理の優先順位を柔軟に変更することで、運用コストを抑えることも可能です。

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AWS Batchに適している処理とは?

AWS Batchは、以下のようなシナリオに適しています。

  1. 科学技術計算
    気象シミュレーションやゲノム解析など、大量のデータを高速に処理する必要がある場合に最適です。たとえば、研究機関ではAWS Batchを活用して計算コストを削減しながら高精度なモデルを構築しています。
  2. データ変換と分析
    ビッグデータを扱う場合、データ変換やクレンジングが必要です。例えば、ECサイトの運営企業が顧客行動データを分析するためにログデータをAWS Batchで処理し、分析可能な形式に変換しています。また、ディープラーニングのような大量の計算リソースが必要な処理に対しても適しています。
  3. 画像・動画処理
    画像認識や動画エンコーディング(動画形式の変更)など、計算負荷の高い処理にも適しています。メディア業界では、AWS Batchを利用して、大量の動画を効率よくエンコードし、配信プラットフォーム向けに最適化しています。

AWS Batchの特徴

AWS Batchの特徴は以下のとおりです。

  1. 自動でスケーリング
    ジョブの量や優先順位に応じて、必要なリソースを自動でスケーリングします。これにより、過剰なリソースを確保することや、事前にリソースの予測を行う必要がなくなり、コスト効率の向上や導入に向けた検討時間の削減が見込めます。
  2. 柔軟なリソース管理
    データ処理を行うEC2において、オンデマンドインスタンスとスポットインスタンスを組み合わせて利用することで、コストを削減しながら安定した処理を実現します。
  3. 多様なジョブタイプに対応
    AWS LambdaやDockerコンテナとも連携することで、さまざまなジョブタイプを実行できます。また、PythonやJavaなどの複数のプログラミング言語をサポートしているため、既存のシステムとも簡単に統合可能です。
  4. 監視と管理機能
    AWS Batchは、実行中のジョブやリソースの状態をリアルタイムでモニタリングできるダッシュボードを提供します。エラーが発生した場合の再試行や詳細なログ機能も備えており、運用の手間を軽減します。
  5. 他のAWSサービスと統合
    CloudWatchといった基本的なサービスは勿論のこと、他の様々なAWSサービスと簡単に連携することができます。Step Functionなどのワークフローを定義して複雑なデータ処理にも対応できます。

AWS Batchの仕組み

AWS Batchにおけるコンピューティング環境とは?

AWS Batchでは、ジョブを実行するための計算リソースを「コンピューティング環境」として定義します。この環境は、複数のEC2ECSなどで構成され、ユーザーの要件に応じて自動的にスケールします。コンピューティング環境は、以下の2種類に分けられます。

  • マネージド型コンピューティング環境
    AWSが最適なインスタンスタイプを自動的に選択し、リソースを管理します。ユーザーは構成の詳細を意識せずに、簡単にバッチ処理を開始できます。
  • アンマネージド型コンピューティング環境
    ユーザーがインスタンスの種類や設定を細かく制御できます。特定の要件に応じて柔軟にカスタマイズしたい場合に適しています。

このように、AWS Batchのコンピューティング環境は、柔軟かつ効率的にリソースを管理するための基盤を提供します。

ジョブ、ジョブキューとは

AWS Batchで実行される単位が「ジョブ」です。ジョブは、実行するタスクやコマンド、必要なリソースの指定を含む設定情報を指します。ジョブは「ジョブキュー」に送られ、実行順序や優先順位が管理されます。ジョブキューは以下の特性を持ちます。

  • 優先順位の設定複数のジョブキューが存在する場合、それぞれに優先順位を設定できます。これにより、重要なジョブが先に実行されるよう調整できます。
  • リソースの分配…ジョブキューとコンピューティング環境を関連付けることで、適切なリソースにジョブを割り当てます。

これにより、AWS Batchは効率的なジョブスケジューリングを実現します。また、ジョブの設計・ひな形のことを『ジョブ定義』といいます。

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AWS Batchの料金

AWS Batch自体に追加料金は発生しませんが、ジョブの中で使用するリソース(例: EC2インスタンスやEBSボリューム)の費用が課金対象となります。たとえば、オンデマンドインスタンスを使用する場合、その利用時間に応じた料金が発生します。なお、スポットインスタンスを活用すれば、最大90%のコスト削減が可能です。また、無駄なリソースが発生しないように自動スケーリングを設定することで、さらにコスト効率を高めることができます。料金の詳細は、AWS公式サイトの「料金計算ツール」を使用して見積もることをお勧めします。

まとめ

AWS Batchは、大量のデータや計算負荷の高い処理を効率的に実行するための強力なツールです。自動スケーリングや柔軟なリソース管理、多様なジョブタイプへの対応により、企業における様々なデータ処理に対応できます。コスト効率の良さと高い拡張性・スケーラビリティを備えたAWS Batchを活用すれば、複雑なバッチ処理の課題を簡単に解決できます。ただ、AWS Batchは導入すればいいというわけではなく、失敗してもやり直しがきくようにデータ処理の方法を考慮するなど、様々なポイントもあります。導入に当たっては、ぜひ専業のベンダーに相談してみてください。