AWSにおけるDynamoDB(NoSQL)とRDS(リレーショナル)の使い分け
Amazon Web Services(AWS)は、さまざまなデータベースサービスを提供しています。その中でも特に重要な役割を果たすのが、NoSQLデータベースDynamoDBとAWS RDS (Amazon Relational Database Service)です。
DynamoDBとAmazon RDSはそもそも役割や適切なユースケースが異なっており、適材適所に扱うことによってアプリケーションの性能や可用性を大幅に向上させることができます。
本記事では、DynamoDBとRDSの違いと使い分け、ユースケース、そもそもどのようなサービスなのか、わかりやすく解説します。
目次
DynamoDBとは?
DynamoDBは、AWSが提供するフルマネージドなNoSQLデータベースサービスです。
DynamoDBは、大規模なデータセットと高いスケーラビリティが求められるアプリケーション向けに設計されています。
具体的には、DynamoDBはKVS(Key-Value Store、キーバリューストア)という仕組みを採用しています。これは、データをキー(識別子)とそれに関連する値(バリュー)のペアとして格納することになります。
NoSQLとは?
NoSQLは、「Not Only SQL」の略であり、従来のリレーショナルデータベースに対する代替手段として登場しました。
NoSQLデータベースは、柔軟なデータモデルや高いスケーラビリティを提供するため、大規模で複雑なデータを効果的に処理することができます。
例えば、関連性の少ないデータや、センサーデータなどの大量なデータを処理するケースに向いています。
Amazon RDSとは?
Amazon RDSは、AWSが提供するリレーショナルデータベースのマネージドサービスです。
RDSは主に、従来のデータベースの要件を持つアプリケーションに適しています。
RDSは主要なリレーショナルデータベースエンジン(MySQL、PostgreSQL、Oracleなどの商用データベース)をサポートしています。
また、PaaS(Platform as a Service)というサービス形態を採用しており、ユーザーは一部の運用についてAWSに任せることが可能となっています。
具体的には、パッチ適用やバックアップなどの管理作業をAWS側が自動的に実施してくれます。
リレーショナルデータベースとは?
リレーショナルデータベースは、テーブルと行の形式でデータを組織化し、SQLと呼ばれるクエリ言語を使用してデータを管理・操作するデータベースの形式です。
データは関連性を持つ複数のテーブルに分割され、それらのテーブル間でリレーションシップ(関連)を構築します。
結合や集計などの高度な操作が可能で、整合性やトランザクション処理を重視したアプリケーションに向いています。
たとえると、リレーショナルデータベースは整然と並べられた本棚で、本ごとにカテゴリーが明確に分かれているようなイメージです。
本の整理や検索がしやすく、特定のカテゴリーに絞った情報を効率的に取得できます。
リレーショナルデータベースとNoSQLの違い
リレーショナルデータベースとNoSQLの違いについて記載していきます。
処理速度の違い
従来のリレーショナルデータベースは、データ間の複雑な関係性を保ちながらデータ更新を行うため、大量のデータ処理や高いトラフィックを必要とするアプリケーションに対して弱いという弱点がありました。
一方で、ウェブやモバイルアプリなどの現代のアプリケーションは急速に成長し、大量のデータを効率的に処理する必要がでてきます。
NoSQLデータベースは、KVSなどの仕組みを使うことでデータ間の関係性を単純にし、分散処理などを行いやすくすることで、処理速度を圧倒的に改善することが可能になりました。
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柔軟なデータの形式を扱える
リレーショナルデータベースは事前に定義された構造を持ち、データの構造をあらかじめ決める必要があります。
しかしながら、アプリケーションの要件によってはデータの性質が変化することがあります。
例えばソーシャルメディアの投稿に関するデータベースは、ユーザーが不規則に文字を入力するため、データ構造を事前に決めておくことが困難です。
このように、事前に定義された構造を持ったデータを『構造化データ』といい、それ以外の様々なデータを『非構造化データ』といいます。
NoSQLデータベースは、非構造化データを効果的に格納し、クエリや分析を行うための適切なモデルを提供します。
RDSとDynamoDBの違いは?
リレーショナルデータベースとNoSQLの違いを踏まえて、RDSとDynamoDBは、主に以下の点で異なります。
扱うデータ型
RDSは構造化データ、DynamoDBは非構造化データを扱います。具体的には、RDSは事前にスキーマを定義して利用する必要がありますが、DynamoDBはKVSの仕組みを採用しているため、テーブル内のアイテムは様々な形式のデータを扱うことができます。
パフォーマンス
DynamoDBは高速にデータを処理するための様々な仕組みが備わっています。具体的には、自動的にスケーリングされ、急激なトラフィックの変動にも対応することが可能になっています。
RDSはリレーショナルデータベースであるため、複雑な構造であればあるほど、パフォーマンスは落ちます。
データの整合性
データの整合性はリレーショナルデータベースの特徴として、RDSを利用する際にも保障されています。
DynamoDBはデータの一貫性を担保させるためにはオプションの機能を有効にする必要があります。
データの操作言語
RDSはSQLを使用してデータを操作します。DynamoDBはAPIを用いたデータ操作を実施します。
具体的な使い分けの例
商品の情報や在庫状況、ユーザーの注文データなどを管理するオンラインショッピングアプリを例に、RDSとDynamoDBの使い分けを見ていきましょう
- 在庫状況
高速に変動する在庫状況はパフォーマンスに優れるDynamoDBで管理します。これにより、セール期間中など急激な注文の増加についても対応可能になります。 - クリックデータ
ユーザーがどのボタンをクリックしたか、といったクリックデータについては、柔軟な属性を持つことができ、かつ自動的に拡張をして大量のデータを保存することができるDynamoDBで管理します。 - ユーザーの注文データや決済情報
決済情報等が間違っていると重大なユーザー影響が出てしまいます。そのため、トランザクション処理やデータの整合性が重要となり、リレーショナルデータベースであるRDSを使用します。注文データを正確に管理し、トランザクションが正常に完了するよう保証します。
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まとめ
DynamoDBとRDSは、異なるデータモデルと用途に特化しています。
DynamoDBとRDSの違いを理解し、アプリケーションの要件に合わせて適切なデータベースサービスを選択することが重要です。
具体的には、DynamoDBは大量の非構造化データを処理するために適しており、スケーラビリティと柔軟性に優れています。
一方、RDSは従来のアプリケーションやリレーショナルデータベースを必要とする場合に適しており、整合性やトランザクション処理を強調しています。
データの性質や成長の見込みに基づいて、DynamoDBとRDSを適切に使い分けることで、アプリケーションのパフォーマンスとスケーラビリティを最適化することができます。
使い分けについて不明な点がある場合は、専業のベンダーに相談してみるといいでしょう。