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AWS活用支援コラム

監視とログ設計:CloudWatchなどで可視化するAWSインフラ

AWS監視の基本

AWS(Amazon Web Services)上にシステムを構築した後は、適切な運用のために監視体制を整えることが重要です。監視を十分に行わないと、システム停止の兆候を見抜けなかったり、セキュリティインシデントの発生を見逃したりするおそれがあり、パブリッククラウドの利点を十分に活かせなくなります。

AWSの監視は、大きく次の4つに分類すると整理しやすいでしょう。
システム監視EC2ECSRDSなどインフラの稼働状況(CPU、メモリ、ディスク、ネットワークなど)を監視。
セキュリティ監視:不審な操作・設定変更・脆弱な状態の検知(ログイン、権限変更、公開設定ミスなど)。
サービス監視:ユーザー視点で「正常に利用できるか」を確認(APIURLの応答、レイテンシ、エラー率など)。
コスト監視:想定外の請求や不要なリソース増加を検知。


たとえば社内のWebポータルをAWS上で運用している場合、

  • システム監視でEC2CPU異常を検知
  • サービス監視でURLの応答遅延を検知
  • セキュリティ監視で深夜の不審なAPI操作を検知
  • コスト監視で翌月の請求見込み増加を検知

といったように、多層的に見張る体制が理想です。いずれかが欠けると盲点が生まれ、障害やトラブルの早期発見が難しくなります。

本記事では、AWS上に構築したシステムを可視化・監視するための主要サービスと、運用のベストプラクティスについて解説します。

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AWS監視の目的とベストプラクティス

AWS Well-Architected Frameworkでは、運用上の優秀性(Operational Excellence)、信頼性(Reliability)、セキュリティ(Security)、コスト最適化(Cost Optimization)を継続的に高めることが推奨されています。
その基盤となるのが「監視」であり、言わば運用の計器盤です。

監視を効果的に行うための主なポイントは、次の5つです。

  1. 可観測性の3要素をそろえる
    システム内部で「何が起きているのか」を数値や記録で把握することが重要です。
    具体的には、CPU利用率などのメトリクス(数値)を取得し、アプリケーションの動作をログとして保存するほか、トレースによって処理の流れを追跡します。これら3要素をそろえることで、システムの可視化と原因分析が容易になります。
  2. SLO/閾値を決めて自動通知する
    異常を検知した際は、あらかじめ定義した条件に基づいて自動で通知し、運用担当者へ迅速に伝える必要があります。
    例として、「CPU使用率が5分以上100%に達したらSlackへ通知」「URLのアクセス不能通知が5分以内に10件以上発生したら障害として扱う」など、具体的な閾値(しきい値)と対応ルールを定めておくことが大切です。
  3. タグで一括管理する
    AWS
    では、リソースごとに「タグ」を設定できます。本番/開発環境の区別や部署ごとの所有をタグで表現しておくことで、ダッシュボード表示やコスト集計の効率化が図れます。
  4. アカウントを横断してログを集約する
    重要なセキュリティログは、組織全体で一元管理するのが理想です。
    特に、開発者や外部ベンダーが触れないように制御された専用アカウント(例:セキュリティ監査用アカウント)へ集約することで、改ざん防止と統制強化が可能になります。
  5. アラート疲れを防ぐ
    通知が多すぎると、重大な警告を見逃したり、対応に疲弊したりして運用効率が低下します。
    システムの特性や稼働時間(例:24時間365日運用など)に応じて、本当に必要なアラートだけを絞り込むことが重要です。

AWSの監視サービスは?

AWSで監視を始める際に多くの人が悩むのが、「どこまでやればよいのか」という点です。
すべての機能を一度に使いこなす必要はありません。まずは最小限の仕組みからスタートし、段階的に拡張していくのが現実的です。ここでは、情シスが社内システムをAWS上で運用しているケースを想定し、どのように監視体制を整えていくかを見ていきます。

CloudTrailとは?CloudTrailの特徴と機能

最初のステップは「ログを一元的に残すこと」です。
AWS
ではサービスごとにログの種類が異なるため、そのままでは情報が分散してしまいます。そこで活躍するのがCloudTrailです。CloudTrailは、AWS上で「誰が」「いつ」「どのような操作を行ったか」をすべて記録する仕組みで、いわゆる「操作ログ」にあたります。

例えば、「誤ってEC2インスタンスを削除してしまった」「不審なユーザーがアクセスしていないか確認したい」といった場合、CloudTrailの記録から操作履歴をたどることで原因を突き止めることができます。
一度設定すれば自動で記録を続けてくれるため、まずはCloudTrailを有効化しておくことが監視体制構築の第一歩です。

CloudWatchとは?CloudWatchの特徴と機能

次に必要なのは、システムが今どうなっているかをリアルタイムで把握する監視です。ここで活用するのがCloudWatchです。CloudWatchは、サーバーのCPUやメモリ使用率、ネットワーク通信量、アプリケーションのエラー数などを自動で収集します。
設定したしきい値を超えた場合にアラートを出すことも可能で、メールやSlackへの通知連携も簡単に構築できます。例えば、「CPU使用率が80%を超えたらアラート」「RDSのストレージ残容量が10%を下回ったら通知」といったルールを設定できます。

さらにCloudWatchには、「メトリクスを監視するだけでなく、実際にユーザー目線でサービスが利用できるか」を確認する機能もあります。それがCloudWatch Synthetics(シンセティクス)です。
指定したURLに一定間隔でアクセスし、応答時間やエラーを確認できるため、「Webサイトが落ちていないか」「ログインページが開けるか」といった外部からの死活監視を自動で行えます。一般的な外部監視サービスと同等の機能を、AWS環境内で完結できる点が特徴です。

アプリケーションの詳細な監視をするには?X-Rayの紹介

アプリケーションが複雑になると、単に「動いているか」だけでは不十分です。リクエストがどこで遅延しているのか、どのサービスがボトルネックになっているのかを特定する必要があります。その際に役立つのがAWS X-Rayです。

X-Rayは、ユーザーのリクエストがアプリケーション内をどのように流れているかを可視化するツールです。
例えば「ログイン画面の表示が遅い」という場合、X-Rayを確認すると「データベースの応答が遅い」「外部APIがタイムアウトしている」といった原因をすぐに突き止めることができます。特にマイクロサービス構成のシステムでは、こうしたトレーシングによって障害解析のスピードと精度が大幅に向上します。

コストを監視するには?

監視というと「動作」や「セキュリティ」に注目しがちですが、AWSではもう一つ大切な観点があります。それが「コストの監視」です。AWSは従量課金制のため、設定ミスやリソースの放置によって想定外の請求が発生することがあります。

このリスクを防ぐために役立つのが、AWS BudgetsCost Explorerです。
Budgets
では月ごとの予算を設定し、超過が見込まれると自動で通知を出すことができます。
Cost Explorer
では、どのサービスにどの程度コストがかかっているのかをグラフで分析できます。
例えば、「テスト環境のEC2が止め忘れで稼働し続けている」「特定サービスの通信量が急増している」といった異常を早期に発見できるため、不要な支出の防止に役立ちます。

AWS監視の検討例

AWSの監視は、すべての機能を一度に導入する必要はありません。
まずはセキュリティを最優先に考え、CloudTrailの導入から始めるのが基本です。操作ログを記録し、「誰が」「いつ」「どのような操作を行ったか」を追跡できるようにしておくことで、万が一のトラブルや不正操作にも対応できます。

次のステップとして、CloudWatchを活用し、CPU使用率やディスク残量といった基本的なメトリクスを監視します。これにより、システムの異常を早期に検知し、通知を受け取る体制を整えることができます。

さらにWebサービスを運用している場合は、CloudWatch Syntheticsを利用してURLの応答を定期的に確認し、外部からの死活監視を加えると効果的です。ユーザー視点での可用性を担保でき、障害の発見を迅速化できます。

そして、より詳細な原因分析が求められる段階では、AWS X-Rayを導入します。リクエストの流れを可視化することで、アプリケーション内のボトルネックを特定し、性能改善や障害対応をスムーズに行えるようになります。

このように、監視体制は段階的に整備していくことで、コストや運用負担を抑えつつ、無理なく成熟させることができます。

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まとめ

AWSの監視は、単に異常を検知するための仕組みではなく、「システムを健全に保ち、コストを最適化する」ための経営的な仕組みでもあります。
CloudWatch
CloudTrailX-RayBudgetsといった各種ツールを組み合わせることで、非技術者でもシステム全体の状況を把握しやすくなります。

すべての機能を最初から導入する必要はありません。
まずは、CloudTrailで「操作履歴を残す」、CloudWatchで「基本的なアラートを出す」、Budgetsで「コストを見張る」――この3点を押さえるだけでも、運用リスクを大幅に低減できます。
そのうえで、トラブル発生時に詳細な原因分析が必要になった際には、X-Rayを用いてリクエストの流れを可視化すると効果的です。

もし「どの指標を監視すべきか分からない」「通知が多すぎて管理しきれない」といった課題がある場合は、AWSの専業ベンダーに相談し、監視設計を見直すのが最も確実な方法です。