AWS Data Lifecycle Managerを活用したデータの自動削除とアーカイブ
目次
Data Lifecycleとはなにか?
様々なサービスがITシステムと不可分になっている現代では、膨大な量のデータが日々生まれています。ユーザーのアクションにより発生するデータ(例えば通販の購買ログなど)や、ITシステムのログデータなどです。これらのデータは、データ分析や障害時のバックアップ復元など、様々な場面で利用価値があり、適切に管理する必要があります。
データを管理するための考え方として、データライフサイクル管理があります。データライフサイクル管理とは、データの発生から、活用、蓄積、保管、廃棄までを一連のライフサイクルととらえ、業務要件に沿って適切に管理することです。具体的には、下記のようなフェーズに分解してデータを管理していきます。
- データの生成と収集…ビジネス活動やユーザーアクション、センサーの読み取りなど、どの場面からデータが生成しているかを判断します。
- データの保存…生成されたデータは、データベース、クラウドストレージ、ファイルシステムなどに保存されます。保存の際には、適切なストレージクラスを選択し、データのアクセス頻度や保存期間に応じてコストを最適化します。
- データの使用と管理…データの内容に応じて、適切なアクセス制御やセキュリティ対策を行いながら使用をします。
- データのアーカイブ…長期間アクセスされないデータは、低コストのテープバックアップなどにアーカイブします。
- データの削除…役目を終えたデータや不要なデータは、法規制やビジネスポリシーに従って、安全かつ完全に削除されます。
AWS(Amazon Web Services)では、データライフサイクルを考慮したバックアップを取得するサービスが提供されています。本記事では、AWSにおけるデータライフサイクル管理について記載していきます。
一般的なEC2のバックアップ方法
まずは、AWSにおけるサーバーバックアップの方法についてみていきましょう。AWSにおいて仮想サーバーを提供するサービスであるEC2において、バックアップを適切に行うことは、データの保護やシステムの復旧において非常に重要です。EC2のバックアップ方法として一般的なのは、スナップショットとAMI(Amazon Machine Image)の2つです。それぞれの違いやユースケースについて詳しく見ていきましょう。
スナップショットとAMI
スナップショットは、EC2にアタッチされたAmazon EBS(Elastic Block Store)ボリュームの状態を特定の時点でコピーするものです。スナップショットを利用すると、EBSボリュームの完全なバックアップが作成されます。スナップショットは増分バックアップとして機能し、最初のスナップショットはフルバックアップとなり、それ以降は変更分のみが保存されます。これにより、ストレージの使用量を効率的に管理できます。一方で、AMIは、EC2インスタンスを作成するためのテンプレートイメージです。AMIには、EC2インスタンスが起動するために必要なデータ、設定などが含まれます。AMIを使用することで、特定の設定やアプリケーションがインストールされた状態で新しいインスタンスを迅速に起動できます。
それぞれの違いとユースケースは?
スナップショットとAMIの大きな違いは、スナップショットはデータのバックアップである一方で、AMIはサーバーのバックアップとして機能するということです。それぞれのユースケースとしては、下記のようなものが考えられます。
スナップショット
- 定期的なバックアップ…データベースや重要なファイルを定期的にバックアップする場合に有効です。
- データコピー…特定のEBSボリュームの状態を他の環境で再現するために使用されます。
AMI
- システム構築のテンプレート…特定の設定やアプリケーションを含んだ標準的なシステムイメージを作成し、複数のインスタンスで同一の環境を構築する際に使用されます。
- 環境の複製…開発、ステージング、本番環境など、異なる環境で同一のシステム構成を再現する場合に役立ちます。
AWS Data Lifecycle Managerの概要
AWS Data Lifecycle Manager(DLM)は、Amazon Web Servicesが提供するツールの一つで、EBSボリュームのスナップショットやEBSバックアップのライフサイクルを自動化するためのサービスです。データのバックアップと復元は、クラウド環境において非常に重要な要素ですが、手動で行うのは手間がかかる一方で、どのような設定が行われているのか、設定の管理も重要です。DLMを使用することで、これらのプロセスを自動化し、効率的に管理できます。
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AWS Data Lifecycle Managerでできること
自動スナップショットの作成
DLMは、指定したスケジュールに従ってEBSボリュームのスナップショットを自動的に作成できます。これにより、データのバックアップが定期的に行われ、手動での操作が不要になります。たとえば、毎日深夜にスナップショットを作成するように設定すれば、業務時間外に最新のバックアップが確保されます。
スナップショットのライフサイクル管理
スナップショットはストレージ容量を消費するため、不要になった古いスナップショットは削除する必要があります。DLMを使用すると、一定期間が経過したスナップショットを自動的に削除するルールを設定できます。これにより、ストレージコストを削減し、リソースを効率的に利用できます。
コピーによる地域間のバックアップ
DLMは、スナップショットを別のAWSリージョンに自動的にコピーする機能も提供しています。この機能は、災害復旧(Disaster Recovery)の一環として、データを地理的に分散させるために役立ちます。
タグを使用した管理
DLMは、AWSリソースにタグを付けて管理することができます。タグは、リソースを分類したり、特定のポリシーを適用したりするために使用されます。例えば、「環境」というタグを使って、開発環境や本番環境のスナップショットを分けて管理することが可能です。これにより、ポリシーの適用や管理がより簡単になります。
制限事項と料金
Amazon DLM自体の料金はかかりませんが、別途取得したスナップショットなどのEBSに関わる料金は発生します。また、利用における制約は以下のとおりです。
- ポリシーの作成数…1リージョン当たり100まで
- タグの数…リソースあたり最大50まで
- スナップショットの数…保持できる世代数は1000個
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まとめ
AWS Data Lifecycle Managerは、EBSボリュームのスナップショットの作成、自動管理、およびライフサイクル管理を効率化するための強力なツールです。バックアップの自動化やコスト削減、災害復旧対策など、さまざまなシナリオで活用できます。これにより、AWS環境でのデータ管理が容易になり、重要なデータの保護とシステムの信頼性を向上させることができます。無料で導入することができるうえに、適切な利用を行うことで、データやバックアップの利活用が容易になり、BCPの作成やデータ分析による攻めのDXの助けになることは間違いないでしょう。利用において不明な点があれば専業のベンダーに相談するのも一手です。